誰も住んでいない状態で放置された空き家は、「百害あって一利なし」です。先日は、所有者向けに空き家を活用する方法、自治体の空き家対策の取り組みについて触れました。
今回は空き家を住宅として活用する際に必要となる「空き家のリノベーション」に焦点をあてて、リノベーションのメリットや注意点、費用、賢くリノベーションするコツなどをご紹介します。
「空き家に住もう」と思っても、放置された空き家はすぐに住める状態ではないことがほとんどです。そのため、リフォームやリノベーションが必要になってきます。
空き家をリノベーションするメリット
資産価値がアップする
ボロボロになった状態や築年数の古い空き家は、ほとんど資産価値がない状態です。
そんな状態では、もし売却したいと思っても、なかなか価値がつかないでしょう。
しかし、リノベーションすることで資産価値を上げられる可能性があります。
また、空き家は所有しているだけで、固定資産税がかかります。住宅用地では固定資産税額が軽減されますが、「特定空き家」に指定されてしまうと優遇措置が適用されず固定資産税が跳ね上がってしまいます。空き家をリノベーションすることで、いつでも住める状態にし、固定資産税も減税され経済的負担も軽くできます。リノベーションで一石二鳥ですね。
貴重な建材が使われている物件も
最近は、建材や内装、家具などに古い木材やエイジング加工がされた木材を使うのが人気なようです。ヴィンテージ感がおしゃれで、日本の古民家風スタイルだけでなく、男前なインテリアやアメリカンスタイルなどにも使われます。築年数の古い空き家の中には、太くて立派な梁や、貴重な建材が使われているものもあります。そういった建材を生かした空間演出も人気があります。現在では入手困難な建材が手に入る場合も。空き家が、他の住宅とは一味違った味を出す住宅に生まれ変わります。
古き良き時代の名残や面影を生かせる
今は空き家でも、昔はそこに人が暮らしていました。空き家には、そこで暮らしてきた長年の思い出が詰まっています。あなたの実家が今空き家になっているなら、そのまま取り壊してしまえば、何も残りません。しかし、リノベーションなら思い出の詰まった柱や壁、家具などを残しつつ、劣化した部分のみきれいに直すこともできます。リノベーションすることで、思い出の詰まった家が、きれいに生まれ変わり、家族との思い出や名残を思い返すことができます。
国や自治体からのサポートが充実
空き家は放置すると、どんどん劣化が進むもの。そのままでは家自体が倒壊する危険があるだけでなく、隣近所に被害が及んだり、景観を乱したり、犯罪の温床になったりとトラブルの原因にもなります。
今は、そういった空き家問題を解決するため、国や自治体では補助金や助成金などの制度を充実させています。自治体によってさまざまな制度や取り組みを実施しているので、うまく活用できれば、低コストで新生活がはじめられるでしょう。
空き家リノベーションの注意点
基本的には新築や建て替えより低コストの空き家リノベーションですが、建物の状態によっては、かえって費用がかさんでしまうこともあります。
例えば建物の基礎がシロアリの被害を受けていたり、腐食していた場合、大がかりな修繕が必要となります。こういった場合は、リノベーションより建て替えたほうが良いこともあります。
けれど、一見費用が高くつくように見えても、自治体の補助金を活用したり、不要な工事を省くことで、経済的な負担を減らせるケースもあります。リノベーションする場合は、お風呂やキッチンといった設備のグレード、床や壁の素材など、こだわる部分と節約する部分のバランスをとることも大切です。
次に、空き家のリノベーションで必ず考慮しなければならない点です。それは耐震性です。空き家の中には、1981年の建築基準法改正以降の新耐震基準を満たしていない家も多くあります。古い物件では、耐震補強工事が必要となる可能性が高いです。築年数が数十年の空き家のリノベーションを考える際は、耐震リフォームの費用まで含めた資金計画を立てましょう。 空き家をこれから購入されるという方は、購入前に耐震診断を受けるのもおすすめです。もし耐震リフォームが必要であれば、適切な工事方法や費用を知ったうえで、購入するかどうか決めるようにしましょう。
空き家リノベーションの相場
空き家リノベーションの費用は、工事の規模や内容によってさまざまです。
フルリノベーションの相場
「フルリノベーション」とは、建物を一度スケルトン状態(骨組みだけの状態)にした上で、家全体を大規模にリノベーションすることです。
建物を骨組みだけの状態にするため、間取り変更や配管移動、二世帯住宅化など、大胆な改修をすることができます。
フルリノベーションにかかる費用は、マンションの場合、250万~900万円。
一戸建ての場合は、400万~2000万円です。
1平米あたりの費用で考えると、8~22万円/㎡( ≒ 5?6.7万円/坪)ほどです。
設備や素材などのこだわりがなければ、だいたい15万円/㎡以内( ≒ 4.5万円/坪)で収まるケースが多いでしょう。
通常のリノベーションの相場
間取り変更など必要なく、今あるものをうまく活かしながら部分的な修繕をしたり、トイレやキッチンなど設備の交換を行ったりするリノベーションなら、予算もかなり抑えることができます。予算300万円程度で設備や内装をきれいにできたケースもあります。
また先ほども触れたとおり、基礎や建物の構造部分に大きな修繕が必要だったり、耐震補強が必要だったりすると、その分費用がかさむことに。さらに、内装や設備も使用する建材やデザインにこだわると、それだけ費用は高くなります。
もし、価格も重視しながらフルリノベーションを実施したい場合には、あらかじめ施工業者に予算を伝えた上で、工事をどこまでやってもらえるか相談するのがおすすめです。
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